本稿はブログ旧プロフ欄に書き散らしていた文章を記事形式に修正・リライトしたものです。
私は釈尊の医師シーヴァカ寿命童子へ祈りのマントラを毎朝マジメに捧げる業界で生きている。けれども私は唯物論で世界を観ていますので、スピリチュアル視点で仏教を語る人が大の苦手です。
霊能者とかですね。
そもそも釈尊はスピリチュアルなんて説いてないです。仏教の中心概念である「縁起」は古典物理学によって「古典的決定論」で言い表すことが可能ですし、仏教の代名詞?ともいえる「読経又は念誦」は言語行為論や音響心理学で把握可能です。これは心理作用を意図して行う、脳内物質を運動させるために聴覚経由で入力する音波(空間を伝わる縦波の振動)的コマンドなのだろう。
特に真言はマントラといってヴェーダの讃歌。いわば聖歌だしね。もっとも、経典をテクストとして読誦する場合もあるからこの限りではないが。
また仏教に霊の実在を説く教えはありません。この辺りは別記事〈仏陀の土人形〉に書いてます。
魔物についても同様です。仏教には四魔という言葉が出てきますが、これは煩悩や執着、死への恐怖心など修行を妨げる因縁への呼び名です。肉感的なモンスターの事ではありません。悪霊も魔物も仏教には実在しないのですが、YouTuberなどの霊能者は一体「ナニ」と戦っているのでしょうか。
また仏教が存在を説く「神仏」は、天地一切を網羅的連接的に敷衍し満たす「※完全情報」への名辞。より仏教用語に寄せるならば法身(仏的真理)です。いずれも方便であり寓言寓話の形をとって伝わります。つまり「神仏」とは内的存在であって外的実在ではありません。私達が自分の脳内原子運動や脳内電気信号に「意志・自我」と名付け「我」の存在を主張するように、現実に存在するのは物質だけです。
‥そして天地とは天体と地球を表します。つまり宇宙のことです。
スピリチュアル系の人達が喧伝する二元世界にキャラクター化される神仏心霊は、本来の仏教(初期の根本仏教)の世界観ではありません。他方、大乗仏教については布教過程で創作された(天国地獄などの)寓言寓話を僧侶が文字通り信じていますから、こちらはスピリチュアルと相性がよいのだと思います。
除霊・浄霊を目的に真言唱えだすのがスピリチュアル。
スピリチュアルブームや後述する儒教シャーマニズムなどの影響により、仏教生来の教えとかけ離れた認識が一般化してしまった現状は本当に残念です。六道輪廻や「生まれ変わり」然り。天国地獄は実在でなく存在です。十二因縁や唯識によって「過去/現在/未来」の同一軸に生起また滅(刹那滅)する心の(中に存在する)状態・連続・循環への譬喩になります。
仏教と科学は矛盾せず、また矛盾させてもいけません。
ダライ・ラマは…(中略)もし、科学の証明した事実が仏教の教えと矛盾するのなら、教えの方を変えるべきだと主張される柔軟で謙虚な姿勢には敬服しました。
出展:全国町村会
http://www.zck.or.jp/site/column-article/4726.html
「ダライ・ラマ法王と科学者との対話」筑波大学名誉教授 村上和雄
〈新漢語林第二版より引用〉
仏教概念以前、我々の祖先が太古のむかし「神」をどう捉え観ていたのかが漢字を解字する作業で浮かび上ります。漢字は象形文字だからです。
「存在」とは対象を知覚する事で意識内世界に顕現する心象観念、すなわち現象です。これを形式化したものが文字になる。
太古より、万物を潤す雨をもたらす雷は吉祥の象徴であり、人々(間主観)は天空を切り裂き闇の暗黒を鮮烈に照らし轟くこの現象(対象)を指し示し、感謝と畏怖へ「神」と名付け文字を通すことで存在を物化したのです。
古神道とは易経・陰陽・三礼などの儒仏を含まない日本固有の原始アニミズム。仏教とは、周礼/儀礼/礼記(原儒)の説く祖先崇拝など儒教シャーマニズムを含まない「釈尊が説いた」根本仏教。
釈尊も説かれたように、本来の仏教にはヒンドゥー呪術的願望祈願や儒教シャーマニズム的祖先崇拝(先祖供養・墓・位牌)などの教えはありません。釈尊はパーリー経典長部第一経「梵網経」及び第二経「沙門果経」において、低俗な呪術を固く戒めている。特に位牌理解における儒教的魂魄解釈は釈尊の教えと真っ向から対立します。「魂魄と招魂」に至っては、儒教内部でさえ矛盾します。
仏教と仏教以外の宗教における教理・教義の決定的違いは何か。仏教以外の宗教は天地有情に立ち、仏教はこれを法執として戒める。
とはいえ、私は科学主義でも合理主義でもありません。一意的な呪術的思考(心理学用語:ある事象について、理性と観察において因果関係が正当化できない物事に原因を求める思考)を思惟空間から排除するため「自然科学」を解釈観点に借りているのであって、私はアニミズムとしての神道(日本固有の祖霊信仰)をとても大切にしています。儒教的な祖先崇拝ではありません。悪しからず…