以下のような記事、正確には記事タイトル(「Go Toトラベル」感染者増加に影響か 京都大学のグループ発表)が世論一部を刺激しているようだ。
一例としてNHKを挙げる。
www3.nhk.or.jp
引用元アーカイブ
https://archive.vn/NYnlg
GoToトラベルに批判的だった層は、自分達の発言を遡及的に正当化しうる錦の御旗として「当該記事タイトル」を絶賛利用中だ。
それ見た事か!…と
だが、ちょっと待ってほしい。
当該論文を読む限り「影響“が”あった。」とはどこにも書いていない。いや、論文以前に記事本文ですら断定していない。当該論文を読む限り「影響“は”あった。」と判断しきれない旨がきちんと叙述されている。
具体的に当該箇所を指摘しておこう。
www.mdpi.com
https://archive.vn/ddXhl
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事実と意見(価値判断ないし規範)は厳密に弁別しなければならない。
私は医療統計について一切言及するつもりはない。非専門家の境界を越境するつもりもない。しかしながら、事実の正確な認識へバイアスとして作用しかねない公的機関(NHKは広義の公的使命を負っている。)の情報発信は看過しかねる。
勿論、作為的である。などと憶測するつもりはない。ただ、当該記事タイトル「感染者増加に影響か」を普通に国語的に文理解釈すれば「感染者増加に影響(か)」となる。
「か」は終助と読むだろう。反語的に用いているという解釈も不可能ではないが、たとえばYahoo!ニュース(Abema)などの記事タイトルは「GoToトラベル初期段階では感染増加に影響した可能性:京大の研究グループが論文発表」としている。
他のメディアと比べ論旨を逸脱しておらず適切な表現。可能性推定の話ならば異見を差し挟む余地はない。
この問題はとてもセンシティブだ。記事本文まで目を通す人は少ない。原論文まで辿る人はもっと少ない。扇情的な言葉を綴るのではなく、読者が一呼吸置いて考えられるような記事タイトルを付けて頂けたらな‥と思う次第である。
本文とは直接関係ありません
※統計一般論として相関分析を考える際に大切なポイントは、相関関係の中に因果関係を錯覚しない事だろう。
二項の変量を散布図へプロットしてみたところで相関関係は因果関係を含意せず、また疑相関(偶然、交絡因子)が考慮される場合はその影響変数を除いた偏相関係数を求める必要がある。
母集団と標本群の相関係数近似(一致性・不偏性)問題を考慮する必要もある。それ以前に母集団と標本相関係数との無相関(有意性)検定すらスルーされがちなネット言論では前後即因果の誤謬も珍しくない。
当たり前ですが、時間的に連続する事象A・Bの関係を因果関係と即断する事はできない。
最近、相関係数(や因果関係)という言葉がエビデンス正当化のマジックワード杖化していて何だかなぁ・・という気持ち。参照したサンプル数やサンプルサイズの妥当性問題も簡単じゃないと思うが。
因果推論にしたって「因果推論の根本問題(The fundamental problem of causal inference)」があるし、この「反事実は観察し難い」という事実と交絡因子の存在を完全に排除できるか?問題も一筋縄ではいかない。
因果関係なんて概念、厳密にはファンタジーでは。厳密には。