24-BLOG

雑文集

思想と哲学は違う

副題:何が為の哲学か


この手の発想に接する度に思うのだが、哲学って哲学を精神的自由への補助線に使う人と監獄機能を布設するために使う人にわかれるよね。比喩とはいえ。

パスカルは基督教徒にして神学者、思想家でもあったから。

ところで名著オルガノンはギリシャ語で道具を表し、概念つまり「言葉の整理整頓を通して真理の探求を可能・容易にするための道具」の意になるが、哲学とはアリストテレスの著作に示唆される如く文字通り道具なのであって、道具を用いて形而上に「塔」を建築・補強する行為は思想じゃなかろうか。

さて、精神の自由を得るには先ず道具を用いた微分、言葉に備わる意味やその規範作用を解体する作業が必要。一般に観念ないし定義される「〜である。」の自明性は事実領域か。はたまた人間の脳が作り出す解釈か。

後者ならそれは思い込みと思い込みの集合でしかない。つまり虚構・幻影。仮に全人類が解釈したところでフラットアースなど実在しない虚構・幻影だ。

「人は必ず死ぬものである」
これは命題
事実の存否を判断可能

「死は恐ろしいものである」
命題でない
事実の存否を判断不能

では‥
死とは。罪とは。
執行とは。残酷とは。
死と称される物理現象の実在それ自体は事実だろうけれど、死の意味や死生観を固着させる当の言論は哲学というより思想(虚構・幻影)といってよく、思想主体に限り真実として機能する。信じる人にも作用する。


字義通り解せば、哲学とは事物を分解し理を明らかにする学になる。
新漢語林第二版【哲:解字】


こうして言葉を分解整理する過程で帰結的に辿る道筋が、思想の要素となる言葉や概念を微分する思惟・思索となって固着作用を自然と解きほぐす。私はこの営みを哲学とする立場。なので思惟・思索を「ある方向」へ軌道づけたら思想ですし、再構成は設計思想です。

普遍妥当な倫理の構築なんてもの、これは思想領域であって哲学の範疇でじゃない。もともと世界は哲学(思弁)と科学(実験)を区別してなかった。

両者は窮理を目的とする自然哲学であり一つの学問であったが哲学側が窮理に必要のない思想という不純物(非自然)を混入させてしまった以上、道が別れるのも仕方ない。

人はどうあるべきか‥
社会はどうあるべきか‥
あるべき(規範論)‥?

こんなもの、経験科学(実証実験や観察などに基づく客観的経験)側からすれば幾らなんでもやってられないだろう。神という言葉を用いず人や社会を普遍妥当(結局は宗教)へ近似させようと人為の手垢で汚したのだ。

私は過去記事で、哲学とは神なき神への祈りなのだ‥そう書いた記憶がある。哲学は人倫や社会制度など一般規範を設計する行為じゃない。それは(たとえば)カール・マルクスのような思想家がすることだ。

ちなみに初期仏教は解体するだけ解体してビルドしなかった。そこは知ったこっちゃないと。だって他人がビルドしてしまうと、それは他人の世界像を脳へ描写されるに等しいから元の木阿弥ですよね。そこ(他人の世界像)からの解脱が本願なのに。

以下「ブログについて」より転載

“有る”とは諸相が「不変/絶対/独立」で存在‥即ち実在すること。

“無い”とは諸相が「可変/相対/依存」の関係で存在すること。
たとえば斜辺という概念は直角をなす二辺(直角三角形⊿)抜きには単独で存在しえない。

前提あるいは条件と言いかえてもよい。

「私」という概念は私以外(背景:名前/出身/家族/趣味/仕事...)を任意に並べかえる前景化操作(他即一の生成変化)である。

このように、十十無尽の因果律を破る形式で独立可能な事象事物は存在しえず、何者にも関係せず依存せず(他者に一切規定される事なく❲¬他即一❳)唯自己にのみ存在根拠を持つ不変実体エンティアが「有る」ならば、哲学はそれを実在と呼ぶ。宗教の言葉で現れると神になります。

西洋の否定神学はこのアプローチですね。

他方、肯定神学はすべてを内包する完全情報。この完全情報を人格化したものの一つに仏教のアーカーシャガルバがある。
これは先述した「客観的実在」は有るか無いかについて、本来の仏教、つまり初期の根本仏教が出した二つの立場であり、釈尊は「無(¬常一主宰)」とした。
にもかかわらず、ここへ大衆救世といって仏教に必要のない「思想」つまり世界像をビルドしてしまったのが大乗仏教。

神仏を拝めば救われるって教義はバラモンだし、先祖供養を現世利益や死後へ繋げるのは儒教だし、まさに元の木阿弥。僧階制度なんて最早ブラックジョーク。ただ戒名については布施の金額がものいう点、(平等や無差別の全否定だが)カースト制度より幾らかは良心的である。

なお念のためですが、思想を語る哲学者を四の五の是非ってるわけじゃないですよ。思想と哲学はべつものと言いたいだけです。

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