銀行もダイベストメントの対象なのですね。銀行の融資先(石炭産業)が時代精神に反するという理由で預貯金移しちゃった裕福層の意識高いお話を契機に日本の実情を改めて考える。
・・もちろんダイベストメントは自由ですよ。しかし「環境とビジネス」なんて綺麗事に単純化して云々する問題とは到底思えないので。
単純化は危うさを孕む。
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ドイツ環境NGO「Urgewald」調査
世界の石炭産業へ融資(2018年10月〜2020年10月)を行った民間銀行
1位
みずほフィナンシャル・グループ
22,244(百万ドル)
2位
SMBCグループ
21,222(百万ドル)
3位
三菱UFJフィナンシャル・グループ
17,929(百万ドル)
4位
シティグループ
13,508(百万ドル)
5位
バークレイズ
13,396(百万ドル)
参照元サイト:HuffPost
「石炭産業に融資しないで」だから私は銀行口座を変える。“ダイベストメント”に日本のメガバンクはどう向き合うのか。
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たしかに日本もパリ協定批准国であるけれど、資源の安定供給等、日本の抱える以下のような特殊事情を一定考慮する必要はあると思う。
世界各国のエネルギー自給率の比較
出典:第2回エネルギー情勢懇談会参考資料
(⼀次エネルギー。IEA Energy Balances 2017 ※⽇本の⾃給率は資源エネルギー庁推計)
出典:BP統計
日本の化石燃料の輸入先と中東依存度
出典:貿易統計
画像引用元:資源エネルギー庁
あらためて考える、日本における「石炭」の役割国別電源構成
下掲図は2018年データであるものの、国際シェアを比較するとトップランナーは中国と米国で、日本はよく健闘しており2.7%となっている。
出典:IEA
画像引用元:国際エネルギー財団
フランスは原子力に回帰しそうな勢いだが日本も石炭火力を止めたら石油、LNG、原子力への依存度が増すのでは。メイン電源に風力・水力推す人はさすがにいまい。そうすると、原子力は国論われるし石油やLNGだって温室効果ガスをうむし地域リスク(ホルムズ依存度等)の塊だから、安定供給という意味ではやはり石炭に軍配か。
単位:CO2百万トン換算
出典:IEA CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION(2018 Edition)
2015 Greenhouse-gas emissions(2018Edition)
温室効果ガス排出量の推移
出典:CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION 2018 Highlights(IEA)
エネルギー起源温室効果ガス排出量の多い国・地域のトップ10を抽出、カッコ内の数字は2016年排出量(百万トン)
※非エネルギー起源温室効果ガス排出量は含まれていません。
画像引用元:資源エネルギー庁
どのくらい温室効果ガスを排出していますか?
以下は経済産業省「長期エネルギー需給見通し小委員会」策定第4次エネルギー基本計画で発表された2030年エネルギーミックスの数値目標です。
⚫火力:56%
・石油:3%
・石炭:26%
・天然ガス:27%
⚫再生可能エネルギー:22~24%
・太陽光:7%
・風力:1.7%
・地熱:1.0~1.1%
・バイオマス:3.7~4.6%
・水力:8.8~9.2%
石炭がベストミックスから除外されるなんて安定供給の概念が除外されるくらいありえないでしょう。
まあ個人的にはバックトゥザ江戸や風の谷も悪くないですが、あれも嫌これも嫌の純粋理念だけで盲進すると息切れしちゃうテーマがデリケートな複雑社会にはあるハズです。
ところで日本ネタじゃないですが(社会の構成員一人ひとりに還元され難い)財閥型寡頭経済の稼ぐGDP量(国民所得量)を国民経済文脈で称賛する論評って一般的なんだろうか。
適正分配されない一強多弱の格差社会へ国民経済の名を与えちゃうの、語義上も定義上も問題ないし正に資本主義そのものなんですが、国民経済という語感は経世済民や社会主義経済を想起させるので(あくまで私視点のイメージですが)上のような評価に倒錯した印象を覚えてしまって。
適正分配されない一強多弱の格差社会であっても数字を操作すると簡単に富める社会を出現させられる。平均概念を用いた経済論は詐話だと思っているし、初期値の異なる経済体を経済成長率で比較する経済論にも意義を感じない。
30点を60点に引き上げた人
98点を99点に引き上げた人
いずれが優れているかなんて、どうでもよくないですか。
マスコミ人や経済ライターは好きそうですが。