24-BLOG

雑文集

世界は漫画だった

副題:読む人、読まされる人、読ませようとする人

なんだか違和感を覚える国際政治学者の主張あるある。

「ロシアもウクライナも両方悪い‥は不適切。」というもの。

いや基本の思考フレームとしてならその通りだし異論ないんだけど、妙に違和感を覚える。

言葉や概念の射程問題。

このあたり(いわゆる)西側世界で意図的に操作されてる気がして、つまり思考スキームとしてなら一種のプロパガンダ。

過去記事「どっちもどっち?」で書いたように、私はこの考えかたへ全振りする思考法と距離を置いてますが、これは文字通り「全振りする思考法と距離を置いている」だけであって、現に発生している状況のみから評価される善悪を演繹的に過去・未来の相互(当事者性)関係と評価すべてへ適用可能と考える絶対的善悪思考は暴挙と思う。

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通常は現に発生している被害状況を転換するため必要な限度でとる行動が正当化されるのであって(その限り善悪評価が伴いうるだけであって)質量ともに限度を超える行為があったならば、同行為は正当化され難いし善と評価されることもない。

また同状況へ至る複雑な因果関係への考察抜きに、過去・未来に向かってすべて一方的に正当化・不当化されることもない。

たとえば一般論、被害者だからといって自分を有利にするためならば嘘(dis information)を流して善いわけない。

たとえば被害者が(現在の)加害者に対して違反・違犯行為に及んだ過去があるならば、現在の相互関係(被害者の立場)を理由に過去の違反・違犯行為を未来に向かって免責できると考えて善いわけない。それはそれで別途争点になるハズでしょ。

犯罪と評価される行いに手を染めた人がいたら、演繹的に過去に遡って悪を認定されてしまうのか。世の中あるあるだと、あの人は現在悪行と評価される行為をしたのだから、過去もきっとそうなんでしょう、とか。

反対に、犯罪被害者と評価される人の過去は加害者との相互関係において演繹的にすべて一方的善なのか。

未来に向かってもそう?・・又これら視点を挙げることって不当な相対化?
そんなわけない、と判断できる社会であってほしかったが、世論は概ね水戸黄門レベルの勧善懲悪思考って現実・・

世界は「アプリオリな絶対善」と「アプリオリな絶対悪」が戦ってます。漫画か。
関連記事「善悪は同相写像

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あと、ウィル・スミスの件もそうなんだが、「ダメ」とか「許されない」とか「正当化されない」と言う場合におけるダメ、許されない、正当化されないの「射程、範囲、効果等」を等閑視して立論する傾向のある世論やライター、ちょっと怖い。

冒頭書いた言葉や概念の射程問題と似た構造。

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たとえ法律的にアウトと評価される行為でも、また学者が勝手に基準づける倫理道徳に悪とされようと、人間の普遍的感情(※1)に照らすと現れる像について心情としては理解できるよという行為があるならば、またこの理解へ一定の同意を得られるならば、このような相互浸透(止揚場)の存在を許す空間に「ダメ」は及んでないでしょ。

換言すると、「ダメ・許されない・正当化されない」の効果は行為の様態、つまり目的達成の方法という部分にのみ及ぶのか、あるいは動機や目的を含む全部へ及ぶのか、という話。

動機や目的は不当でないが方法につき不当というならすべて括って否定するのは粗雑すぎる。

(※1)東洋思想における普遍的感情
惻隠:いたましく思い憐れむ心(仁)
羞悪:不義を憎む心(義)
仮にこういった人情の働く間主観と止揚場が一定存在するならば、こういった不可侵性をもつ空間の存在を観念できるのならば、少なくとも私は人々のこのような聖域をぞんざいに扱えない。

これは人間ドラマを2値原理で評価する思考とは別の思考軸であって、人間相互の関係(つまり社会)においてはこういったヒューマニティーを許す場(物理量:物象の状態の量)と空間(場の存在形式を根拠づけるもの)も現にあるよという話。
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ところで、一般的に否定される行為の中から聖域を見出す態度、これは悪かね。

そうであるならば、漫画みたいに「絶対善の槍」や「絶対正義の剣」「一意の魔法」で攻め込みたいよな。そりゃ。

善も悪もひとつなぎの輪に存する位相であって、世の中は相互に独立した善悪の輪が絡みあうような知恵の輪ではない。

国には国の状況があり地域には地域の状況があり個人には個人の状況がある。

この状況の違いが視点をつくり位相を生むのであって、善悪を単純2値原理でわかち分離可能とする立場は実態と乖離する。

まるでワンピースに登場する世界政府のような漫画視点で事象を認識・評価・判断する政治家や学者は危うい。

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2022.04.14 追記
続編記事「世界は漫画だった(追記)」を投稿しました。

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