24-BLOG

雑文集

介護の虚実と介護事故

一言:①保険料大幅増額か②介護員徴用制か③伝統的家族観の復活(民法第877条第2項「扶養義務」の解釈変更→引取扶養を含める)か④介護再定義(尊厳偏重→合理性、効率性重視)か⑤移民の受け入れか⑥成田案か。

②を歴史的な言葉で表現すると夫役税だろうか。③の条文内容へ引取扶養を読み込み可能か不明瞭ですが、「アレも嫌だコレも嫌だ」の通る未来よりも可能性はありそうです。

【改正憲法第二十四条】
家族は社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される。家族は互いに助け合わなければならない。

出典:自由民主党
日本国憲法改正草案
https://constitution.jimin.jp/document/draft/


出典:厚生労働省
我が国の人口について
人口の推移、人口構造の変化
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html



出典:厚生労働省
後期高齢者医療制度について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-35.html



出典:内閣府
平成29年版高齢社会白書
高齢者の健康・福祉
認知症高齢者数の推計



出典:厚生労働省
介護職員の必要数について
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf


「夜勤が怖くて仕方ない」ワンオペ解消を求める要望書提出 4万筆の署名とともに「複数配置を当たり前に」

引用元:介護ニュースJoint
2022年11月11日

https://www.joint-kaigo.com/articles/3534/
過去記事で引用したのですが、このような訴えに対し「介護保険法は職員配置基準を定めてるのに何故ワンオペが発生するの?」という疑問を頂戴した。

簡単に説明すると介護保険法がいう配置基準は一日に勤務する介護員の総数でしかないんです。たとえば配置基準「3:1」で入居者数15名であれば介護員5名必要になりますが、あくまで総数。ですからExcel↓のような人員配置(例)が起こりえます。

雰囲気を表現したいだけなので作り込んでないですが。


※ありがちな人員配置例だが朝/夕食時は15名を二人対応する事になる。(これは入居者一名を0.1333人でみる計算。)これは実に巧妙な配置基準トリックで、高齢者三人ごとに介護員が付いてるわけじゃないんですね。

※夜間介護員に労働基準法上の休憩時間はありません。いわゆる手待ち時間があるのみで法律違反がビルトインされた構造になってます。

現状でさえこうなのに、介護員が不足し過ぎて配置基準緩和されるかもしれません。

「3:1」→「4:1」

なお、以下にいう指定介護老人福祉施設とは、一般に特別養護老人ホームの名称で呼ばれる老人福祉法が規定する介護施設を介護保険法の指定基準からみた場合の介護保険施設です。たとえば介護保険法上の介護老人福祉施設は入所定員三十人以上の特別養護老人ホームに限ります。※人員配置基準は介護施設の種類によって異なりますが、面倒くさいので弊ブログで配置基準と言ったら一律これの事です。

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八十八条第一項及び第二項の規定に基づき、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準を次のように定める。

第二条
三 介護職員又は看護師若しくは准看護師(以下「看護職員」という。)

イ 介護職員及び看護職員の総数は、常勤換算方法で、入所者の数が三又はその端数を増すごとに一以上とすること。

引用元
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411M50000100039

ひろゆき on X: "81歳の認知症の高齢者が、食べ物を、掻きこんで食べて、喉に詰まらせて窒息死。 裁判官「特別養護老人ホームは、遺族に1370万払え」 認知症の高齢者は預からないのが安全、、と。 https://t.co/2tsflebX8B" / X

ひろゆき氏のTWは極論ですけど何とも痛ましい介護事故です。

これは特養なので流石に入居者数15名はないでしょうが(100床前後?)特に朝/夕食時の介護員数はシフト構造上、寡兵を余儀なくされる時間帯です。また一般論、特養は要介護度の高い入居者が多いですから必然見守りや要食介(一部/全部)の高齢者が多いのだと思います。

食べ物を喉につまらせ81歳死亡、特養側に1370万円支払い命令…地裁「危険性予見できた」

判決は、女性が以前から食事をかき込んで食べ、たびたび嘔吐していたことから、「吐いた食べ物で窒息する危険性を予見できた」と指摘。女性が食事する際は職員が常に見守るべきだったのに、目を離した結果、女性が死亡したと認定した。

引用元:読売新聞
2023/03/01 06:54

→危険性を予見できた‥

私も同介護事故については危険を予見できたと思いますが、当該記事は情報不足すぎて細かく原因分析できません。

→常に見守るべきだったのに‥

その通りでしょうけれど、実務ではそれが困難な、判断を躊躇する場面が必ず起こります。

上の事例を参考に一般論として言うならば、誤嚥蓋然性は高いがその点を除けば自立して喫食可能な高齢者aに対して介護員は付きっきりで見守るべきか。

→見守るべきです。(回避義務1)

見守り不能な状況で食事継続すべきでありません。(結果予見1)

では、他利用者から危険の予見が可能な挙動を察知(結果予見2)した場合、その都度aの意思に反してでも食事を中断(つまり強制食事制限※1)すべきか。

→すべきです。(回避義務2)

食事制限は原則虐待ですが、裁判官の認識に照らせば正当な理由ありと評価されるはず。また要介護認定区分はレベル1ですら歩行や立ち上がり不安定ですから、要は介護保険施設のほぼ全利用者について、椅子から腰が浮いた時点で危険を予見できる事になる。なので回避義務を誠実に履行するならば、恐らく数百回の食事中断が必要に思う。

予見可能性の有無と回避義務を争点にするならば、そう言わざるをえない。

では、当該(意思に反する)強制食事制限が強い抵抗/拒絶を発現させaのADLやQOLまた尊厳や精神を深く傷つけ「それ」が認知症を進行させる可能性を予見できてなお介護員はaを皮下出血覚悟で、つまり強引に(都度)身体抑制し当該行動制限をなすべきか。

その都度?(一時性は?)
虐待では?(非代替性は?※2)
訴訟されかねないのでは?

つまりこれはこれで食事制限とは別の新たな論点を生む。なお介護では類似の場面展開が絶え間なく同時多発で起こります。

たとえば認知症で多動のある高齢者なら同じ場所に1分と留まれないケースもあります。ここに頻尿・立位/歩行不安定が加わると、その都度(立位/歩行/排泄)介助が発生します。

裁判官や学者や厚生労働省は自分達の理論上にしか存在せぬ幻の介護現場のみを念頭に立論するクセいい加減改められないのかね。

たとえば認知症介護基礎研修義務を現場へ課すような屋上屋策でなく先ず厚労官僚や学者や裁判官こそが認知症介護の実態理解(前提把握)に努めるべきです。

しかし日本ってホント旧軍体質ですよね。ロジスティクス度外視の、つまり現実無視の理論万能主義。現実無視の歪んだ専門知主義。

これ、日本国民(施設利用者/ご家族/介護事業者/介護員)誰も幸せにしませんよ。

※1,2)補足ですが、上のような状況へ(aに対する)傾聴やインフォームドコンセント(説明と同意)を持ち込む時間的余裕はないです。他方で危険を予見可能な状況(つまり回避義務)が同時出現してるからです。

また認知症の状態によってはそもそも説明が通りませんし、都度ご家族や成年後見人から身体的拘束等の許否を伺う時間的余裕は現場にありません。

なにせ拘束要件自体が切迫性を要求してますからね。

入居段階で事前同意をとる施設もありますが(病院はmedicalなのでともかく)身体拘束前提を果たして介護(尊厳と自立を支えるケア)と呼べるのか、個人的には疑問が残るところです。

入居後に状態急変し症状が現れるケースも少なくないですし、必ずしもご当人の「理解/了解/納得」を得た実質的同意のもと入居されてるわけじゃないのが高齢者福祉の実態。行政も社会もご家族も綺麗な言葉で蓋してるけど、強引なリロケーションが入居後の「帰宅要求や徘徊(認知症状)」発現そして進行に影響を与えるとしても道理です。

付け加えると、介護員の主観的状況判断(違法性阻却事由を満たすか①切迫性②非代替性③一時性)に客観的妥当性があるか問題と家族同意の有無は別問題です。そうでないなら介護施設とご家族が共謀すれば幾らでも身体拘束(人権侵害)できてしまう。
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八十八条第一項及び第二項の規定に基づき、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準を次のように定める。

第十一条

4 指定介護老人福祉施設は、指定介護福祉施設サービスの提供に当たっては、当該入所者又は他の入所者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。

引用元
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411M50000100039
行動制限は虐待と紙一重です。

なぜなら行動制限は高齢者の人権(自立的選択/決定/遂行・個の尊厳/人間らしさ)のみならず、ADL、何よりQOLを深く傷付ける行為だから。

介護は「medical」じゃない。

人権意識の低い裁判官には青天の霹靂かもですが、高齢者は介護側の目的に都合よく管理されるべき又そうすべき“”ではないんですね。意思ある“人間”なんですよ。(それを遮られるとき顕れるのが尊厳では。司法関係者の観念する尊厳を聞きたい。)

これが現代介護福祉の大前提。

なので行動制限(身体的拘束等)自体を介護ポリシーレベルで禁止してる施設も多いですね。

数名の介護福祉士が、ひろゆき氏へ「要件を満たせば身体拘束できるぞ!」「家族の同意があれば‥」などとreplyしており、まさかそんな、とスベりました。

介護施設は医療機関じゃない。
ここを失念してはいけない。

事前/事後の家族同意があってもなくても(同意の有無と要件該当性は別ベクトル。身体拘束要件に家族同意入ってないので)現場介護員に可能なのは状況評価及び該当性判断(①切迫性②非代替性③一時性:主観領域)→遂行だけです。当該行動に妥当性(客観領域)が認められるか?についてはご家族含め被拘束側や第三者の認識/評価と可分できないから最終的に認定するの司法では。

痛ましい介護事故ですけれど、現場の介護職員を杓子定規に非難できるほど私は優れた人間じゃない。普通の人間は瞬間移動とか分身の術を使えないので。

尊厳と自立を支えるケアとは一体‥あの手の司法判断が続けば明日は我が身と今後多くの介護現場で人権や尊厳が二の次にされてゆくと思う。その時は、ひろゆき氏のTWも極論でなくなると思う。医療でいうところの「defensive medicine

介護職には全施設入居高齢者の(安全のみならず)人権を守る責任があるからね。人権自体が訴訟リスクの内在する取扱注意マターだ。

防衛医療
「主に医療過誤の賠償責任にさらされる危険を減ずるために医師が行なう検査・処置・診察。あるいは、医療過誤の賠償責任にさらされる危険を減ずるためにリスクの高い患者の診療を忌避すること。」

しかし毎度の事だけど、こういう話をすると「擁護するのか」系のクレームが必ずくる。

擁護なんかしてねぇ‥ひろゆき氏の「預からないのが安全」を直ちに採用する介護施設などないと思うが、このままじゃ早晩そうなるだろうという話。

医療過誤解決事例報告>介護施設内での転倒事故で骨折した事案

コメント(増加する介護事故)
しかし具体的な問題行動を認識し、かつ当該施設で対応が困難と判断される場合には家族にそのことを告げて引き取りを求める義務がある。また施設に受け入れるに当たっては、当該施設で対応可能かについて慎重に検討しなければならず、対応が困難な場合にはそもそも受け入れるべきではない。

引用元:坂野法律事務所HP
https://sakano-law.com/case_iryoukago/?p=261
上事例は件の誤嚥事故と状況異なるものの、つまりはこういう事なんだろうと思う。そうなのだ。家族に引き取りを求めるべきだし対応困難な場合には“そもそも”受け入れるべきじゃない。

しかしである‥

ご家族から介護を受けられる環境にある高齢者はまだよいが、そうでないならば‥

以下、前回記事より転載。

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上ツイートはあるお医者様のツイートだがツイートなので半分冗談だろう。しかし地獄の蓋は開きはじめてる。

来たる2025年問題‥
これは冗談でないよ。

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