24-BLOG

雑文集

冤罪を冤罪あらしめるもの

前回記事(国家機関たる法務大臣が推定有罪に肯定的な国【何が犯罪かは権力の胸先三寸で決まる!】)の後書きです。

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冤罪概念の周縁を思わせるツイートがあった。映画『それでもボクはやってない』の作中で描かれぬ顛末の【末】について、こうした把握をされるひと、よくみる。


https://x.com/myceliumR/status/1833494062370021824 より引用

御本人がウィキペディア情報から根拠付けてるため私も確認してみた。すると次の記述であった。

ウィキペディアは頻繁に更新されるうえ不確かな点も少なくないので取扱いに注意を要する。

以下、ウィキペディア
【それでもボクはやってない】
モデルとなった事件より引用

本作品のモデルの1人に、2000年5月30日に電車内で痴漢したとして逮捕され、懲役1年6月の有罪判決が確定し、刑務所で服役し2004年に出所した男性がいる。

2015年、46歳となった男性は、東京地裁に15年前の事件について再審請求を行った。

その記者会見では周防監督も同席し、再審請求のための新しい証拠となる「再現ビデオ」を制作したことを明かし、本人の無実を信じていることを語った。

こちらが物語の主軸を構成する金子徹平のモデルストーリーだと思うんですが。

また、2021年のインタビューで「取材した法曹が何人ぐらいなのか」を尋ねられた監督は、本作品を作るに当たり痴漢冤罪事件の取材から始まり、「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」(後述)に関わっていた法学者に取材したり、全国痴漢冤罪弁護団会議に出席したり、各種勉強会にもお邪魔したり、元検察官の弁護士等にも取材し、取材した人物は数十人では済まない、と回答している。

作品のディテールを深めるため入念な取材を行っている。取材対象に「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」を挙げている。

なお、前述に登場した「痴漢えん罪被害者ネットワーク」とは、印刷会社員男性が女子大生から痴漢被害を訴えられ捕まり、東京都迷惑防止条例の5万円の罰金刑が2002年9月に確定したが、男は無罪を主張して2002年に代表者として設立した団体である。

団体代表者の背景、設立経緯を説明している。

冤罪被害を訴える13人で結成され、13人の構成は、無罪確定済みの元被告が3人、逮捕されたが不起訴が1人、有罪確定後再審準備中が1人、裁判中が8人であった。

団体メンバーの概況を説明しており、無罪確定済みの元被告が3人、逮捕されたが不起訴が1人、有罪確定後再審準備中が1人、裁判中が8人とあります。

メンバーの中に金子徹平の直接のモデルがいるのか、だとしたら有罪確定後再審準備中の人のことなのか、文章からは明らかでない。

代表者の男性は裁判で106名の弁護団を結成するなどし、無罪を訴えた。

しかし、2003年7月、そのビラ街頭配布の帰りに車内で向かい側の寝ていた女性のスカートの中を携帯電話で盗撮し、逮捕され、懲役6月執行猶予4年の有罪判決がとなっている。

これは取材対象の一つである「痴漢えん罪被害者ネットワーク」代表一人を指しており、他の団体メンバーのことではない。

※参照したWikipedia本文は更新日付2024年9月8日のものです。

記事Archive
https://archive.is/Q1Mid

言及作品は複数の事例エピソードから抽象統合された【ボク】を金子徹平へ彫り込み練り込むことで問題のディテールを演出してる。そうした形式で物語が進行するんだから、そりゃ当該代表のケースも参考にされてるだろう。

そうだから冒頭ツイートで投稿主が放った「やっぱり彼はやっていた」発言は迂闊ですよ。

たとえ逆転無罪を勝ち取ったところでこういった言説や世論のせいで誤認識に基づく偏見が周縁から再生産されるんです。

無罪確定済みの元被告3人
逮捕されたが不起訴1人
有罪確定後再審準備中1人
裁判中8人
※現時点(2024年)の状況は不明

追記:こういう視点の事です

女性専用車両に対して「乗り分けが面倒だから必要ない」と言える事こそが被害に遭わない方の性別だよね

他人に体を触られる恐怖を知らないから言える事。そして恐らく冤罪なんてものがほとんど存在しないのも本当はわかってるんだろうね

冤罪を本当に怖がってたら男性も男性専用車両を作るように行動を起こすだろうから。痴漢に対して謎の共感性抱いて冤罪って騒いでるだけ。冤罪が本当にあると思ってたら面倒くささよりも自分の安全優先するでしょ

引用元:X(@aochanp)
2024年9月30日投稿

アーカイブ
https://archive.is/DxTjo
この人これ本気で言ってるのか。(冤罪を狭義にとるなら)無罪なのに有罪判決を受け上級審で無罪となる事例が存在するし、(広義にとるなら)嫌疑を向けられ不可避的に不利益を被る事例、あるいは嫌疑の段階なのにマスコミやツイッターで実名全国報道・拡散され不利益を不当に被る事例が事実として存在しますよね。

罪に問えない、あるいは無実なのに一方通行で不利益を強いてくる社会がある。

こうした問題を社会言論の俎上にのせ改善を訴える言行は不当じゃないのにナゼ「痴漢に対して謎の共感性を感じて冤罪って騒いでるだけ。冤罪が本当にあると思ってたら‥」などと痴漢共感者扱いされなきゃならんのだ。

@aochanp氏の表現は幾分ソフトですが、もっと酷い言辞もあって、冤罪を問題化すると「犯罪者予備軍」あるいは「セカンドレイプ」と倫理的貶めを受ける。

そういう貶め必要ですか?

あらゆる犯行は忌むべき民対民暴力であって、濡れ衣は忌むべき国家・社会暴力である。国民は両者を警戒すべである。なぜ素直にそう言わないのだろうか。

思うに、痴漢の共感者、犯罪者予備軍、セカンドレイプ等の発想やそうした言語感覚に対する共感継起が濡れ衣レッテルの思形へ実体を与えるんじゃなかろうか。

なお話題の女性専用車両問題、(鉄道は寡占事業とはいえ)基本的に民間が対応してる案件なので、男女双方の安心安全に貢献すべく実施した一私企業の施策をわざわざ批判しようとは思わん。端的に差別だが理由のある差別です。


2024/09/13/213832投稿

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