副題:正義の表しかた
一言:政権与党の法務部会は動くべき。無罪の国民が回復不能な制裁を受ける社会は是正されるべき。
近時の報道でこんなものが出た。
表題:性行為動画に「暴行、脅迫認められず」被害証言に虚偽可能性、男性2人に逆転無罪判決
引用元:産経新聞
2024/12/18 20:26
事件内容には触れない。既に【僕や私の解釈と正義】がネットを蹂躙している。なお、報道時点で判決文は公開されてないのだが、こうした【(判決文不明なのに強弁する)僕や私の解釈と正義】はとんでもないアクションを引き起こした。
表題:大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。(アーカイブ)
本文引用:特に判決を下した飯島健太郎裁判長を許してはならない。年内には、署名リストを印刷し、個人で訴追請求事由を記した文書と共に、これだけの同意があったことを示すべく「裁判官訴追委員会」への提出を試みます。
引用元:https://www.change.org/
https://x.com/JalXX2004/status/1870521744664178735 より引用
https://x.com/amimoDIY/status/1870803129622757653 より引用
判決文に当たれないのに判決文の内容を前提として抗議を正当化する人や、閲覧しようもない資料を見たと強弁して便乗する人も。更には裁判長を糾弾するハッシュタグまで作られツイッターのトレンド入りする始末。
今も「#◯◯裁判長に抗議します」タグへの賛同コメントが溢れる。
A曰く、正義より法が上なのか。
B曰く、民主主義の否定。
C曰く、民意を無視して無罪にするならそれはもう独裁国家。
D曰く、どんな理由があろうと被害者からしたら加害者犯人の事情なんか関係ない、絶対的に被害者のケアと守られる社会や法律になってほしい。加害者を守る必要なんかない。
Dは中川翔子氏の言葉
https://x.com/shoko55mmts/status/1869587311098528235
特定の出来事を念頭にした発言か一般論か定かでないが、ところで加害者犯人とは手続中どの段階を指す言葉だろう。また「守る」とは刑事手続(を経る被疑被告人の権利)を指すのだろうか。一審判決を受けた被告人へ中川氏の理屈を適用すると三審制は意味を失う。被疑段階で適用するならそれは裁判不要論である。
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F曰く、逆転無罪が許される司法であってはならない。
Fはなんと政治家の発言
https://x.com/ayaka_yoshi_da3/status/1870283206244880657
直球で三審制に反対。
またツイッターでは一部アカウントが男性の個人情報を拡散しており、裁判も無罪判決も意味を成さない時代がきたなと。
※人権保護のためモザイク処理してます
なるほど民意とは民の意と書く。意は心の音と書く。心底を打ち鳴らす正義のドラムに身を委ねたのか。
司法判断への批判も裁判官への批判もあってよい…というか何が問題なのかわからない。どしどしやればよい。よいが、憲法と法に則り適法にくだした判断に対して当該判断を許せないとして署名集めて裁判官訴追委員会へ提出というのは批判の範疇を超える。
裁判長への個人攻撃であったり有る事無い事を非難の根拠に据えるの論外だろう。ご家族への言及とか正気の沙汰じゃない。
第三項:すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。
弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
一 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
二 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。
裁判官に弾劾による罷免の裁判を受けさせる目的で、虚偽の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
ところで民意って何で決まるのだろう。社会には国民一人ひとりの声があり、その群があり、多様な集がある。自由な民主社会で一糸乱れぬ統一ビジョンなど存在し得ないのだから、つまり民意は一つじゃない。
なんか裁判の制度が形骸化してしまった。もはや逆転無罪の価値が社会の中で意味を持ち得ない、機能し難いのだ。そうした本来守られるべき社会を成立させるための諸前提を揺るがす秩序破壊の人民裁判アクションが、ネットとりわけSNSを震源地に鳴り響いてる。
★これ大問題だと思うけど、政権与党の法務部会は関心ないのだろうか。
あと個人的に気になったのが、「(事実無根を除き)無罪と無実は違う」というコメント。無罪でも無実でないなら悪である、とでも言いたいのだろうか。したがって(依然悪なのだから)糾弾されるべき、ということか。これ一般論、その【実】を法と証拠に基づき評価した結果、根拠が十分でないため可罰性を認め難い、刑事非難は相当でない、ということじゃないのか。
たとえば机を並べる友人が、貴方の所有するペンを無断使用している。友人の認識では使用貸借を申し込み承諾を得ている。また返す前提での使用である。①申し込み(不法領得の意思)の有無。②諾否の意思表示の有無。③意思形成のプロセス。が争点となり第三者視点で精査した結果、意思形成を歪める外部要因は十分といえず、貴方の承諾があった疑いを払拭できない。また友人から不法領得の意思も確認できない。とした場合、それでも(窃取、使用窃盗を肯定できずとも)残る友人の【実】とは何だろうか。
なるほど第三者視点で精査したといっても登場人物は二人。両者の認識に齟齬があり互いの証言のみに依存するなら(やり取りを録画した証拠映像でもあれば別だが)窃取や使用窃盗の可能性を100%排除することはできない。だがそれは社会的非難に相当する可罰的な【実】なのか。この友人は犯罪者あるいは刑事的意味における加害者としてなお非難されるべきなのか。
とはいえ実際ペンのインク残量は物理的に減じてるわけだし、この友人に一定の落ち度(たとえば認識の錯誤や誤信)があるなら(わざとじゃないなら非難のトーンは下げるけど)使った分のインク代くらい払えとなるのもわかるし応分の謝意を示せというのもわかる。
つまりサンクションのありかた。ただ上の例なら民事だし、(刑法の謙抑性、補充性、断片性の観点からも)不法に包含されうる違法性と可罰的違法は区別されるべきだが。
※ここで言う【錯誤】は術語じゃなく広義の錯誤です。悪しからず念のため。
あの人ら、他人のペンを使用すること自体が犯罪を直接(無前提に、事情によらず)構成するとか思ってそう。但し、真の所有者が女性で相手が男性のとき限定で。
なお、上の例は当該事件の構造を窃盗で説明したいわけじゃないので念のため。冒頭書いた通り、事件内容に私が(私の言葉で)接触れることはない。判決文が公開されたとて事件を解説することもない。私はただ【無罪であっても無実じゃない。】という人が考える【実】の内容物やその性質を知りたいだけで。
黒ではないが白でもない灰色ならば、依然として黒の性質を帯びている。したがって当該黒を逃さず非難し制裁せよ。一旦被疑被告とされた者は白無垢を纏って戻れと。
こんな感じか。
感想
いかなる事実が認められ認められなかったのか。いかなる規範観念や解釈技法が適用されたのか、いかなる論理構成で評価されたのか、これらの詳細が不明なまま正義感を燃料に想像を膨らませるって、まあ、人間的というか(ごく自然な)人間味なので、これからより先鋭化してくんだろな。とりわけ近現代的理性へのバックファイヤーは凄まじい。あゝ人間とはつくづく感情的・直情的動物なのだな。これは一面において愛すべき人間的特質だから、皆さん上手にバランスしてほしいのだけど。
人たらしめる理性
人あらしめる感性
私ならしめる悟性
2024/12/23/204314投稿