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背馳してゆくドイツ憲法——危険領域で鮮烈に輝くジェンダー平等の矛盾【追記∶日本の中の法的セクシズム】

副題∶パブリックエネミー

ドイツ政治が水面下不可視空間で兵役関連制度の見直しを進めていた。それ自体は外国の安全保障問題なのでが本来素人が口出しするテーマではないのだが、同国はジェンダー平等先進国として知られており今回の制度見直しは時代精神の何たるかを再考させられる内容を含むためその点限定してコメントする。

Introduction

Berliner Zeitung

https://www.berliner-zeitung.de/news/neue-wehrpflicht-regel-junge-maenner-duerfen-deutschland-nicht-mehr-laengere-zeit-ohne-genehmigung-verlassen-li.10028539

Neue Wehrpflicht-Regel: Junge Männer dürfen Deutschland nicht mehr länger ohne Genehmigung verlassen

04.04.2026, 20:38 Uhr

Frankfurter Rundschau

https://www.fr.de/politik/genehmigung-drastische-wehrpflicht-aenderung-maenner-die-deutschland-laenger-wollen-brauchen-zr-94248132.html

Wehrpflicht-Regel: Männer brauchen Genehmigung für Auslandsaufenthalt – Ministerium kündigt Verbesserung an

05.04.2026, 04:46 Uhr

とりわけ注目されるのが、長期の国外滞在に際し、一定年齢の男性に対して事前手続きを求めるという制度改正。

形式上は「許可制」であり全面的な禁止でないものの、対象が男性に限定されている点が議論を呼んでいる。本稿では、この制度変更を手がかりに、ドイツの兵役制度の変遷とジェンダー平等との関係を検討する。

ドイツ憲法の内部矛盾

まず同国の基本秩序を確認しておこう。

Basic Law for the Federal Republic of Germany

Article 3

[Equality before the law]
(1) All persons shall be equal before the law.

⇒すべての人は、法の前で平等である。

(3) No person shall be favoured or disfavoured because of sex, parentage, race, language, homeland and origin, faith or religious or political opinions. No person shall be disfavoured because of disability.

性別、親族関係、人種、言語、出身地、信仰、宗教的または政治的意見を理由に、いかなる者も優遇されたり不利に扱われたりしてはならない。障害を理由に、いかなる者も不利に扱われてはならない。

Article 12a

[Compulsory military and alternative civilian service]
(1) Men who have attained the age of eighteen may be required to serve in the Armed Forces, in the Federal Border Police, or in a civil defence organisation.

⇒18歳に達した男性は、軍隊、連邦国境警備隊、または民間防衛組織での勤務を命じられることがある。

(2) Any person who, on grounds of conscience, refuses to render military service involving the use of arms may be required to perform alternative service. The duration of alternative service shall not exceed that of military service. Details shall be regulated by a law, which shall not interfere with the freedom to make a decision in accordance with the dictates of conscience and which shall also provide for the possibility of alternative service not connected with units of the Armed Forces or of the Federal Border Police.

出典∶Bundesministerium der Justiz
ドイツ連邦司法省
(参照年月日∶2026.04.05)

1.男性のみに課される制約

2026年1月施行の制度改正により、17〜45歳までの男性は、3か月を超える国外滞在に際してBundeswehrのキャリアセンターへの事前申請(長期国外滞在に関する事前申請義務)が求められることとなった。

a,対象は留学、就労、長期旅行など滞在理由を問わない。
b,短期(3か月未満)の渡航は対象外。
c,政府説明によれば原則として許可は与えられるとされるが、事前手続きが義務化された点に特徴がある。

政府側はこれを「動員把握のための行政的手続き」と説明しており、直ちに移動の自由を大きく制限するものではないとする。

ただし、従来は緊急事態を前提としていた枠組みが、平時から制度化された点は重要である。また、この義務が憲法上の兵役規定(基本法第12a条)に基づき男性に限定されている点も争点となっている。

2.兵役制度の変遷と再編の方向性

ドイツの兵役制度は、冷戦後に大きく転換したが、近年は再び「備え」を重視する方向に動いている。

a,1956年以降:男性に対する徴兵制を実施。⇒Wehrpflicht
b,2011年:徴兵制を停止し、志願制へ移行。
c,2022年以降:安全保障環境の変化を受け、防衛力強化の議論が進展。
d,2026年:制度的には志願制を維持しつつ、動員準備の枠組みを再整備。

具体的には、若年男性に対する質問票の義務化や将来的な身体検査の導入が予定されている。現時点で強制的な入隊義務は存在しないが、必要に応じて徴兵制的運用に移行できる制度的基盤が整備されつつある。

3.ジェンダー平等との緊張関係

問題となるのは、こうした義務や手続きが男性に偏っている点である。

a,質問票、身体検査、国外滞在手続きはいずれも主に男性を対象としている。
b,女性については「参加や協力」が任意にとどまる領域が多い。
c,他方で、ドイツは労働や育児などの分野では積極的に男女平等政策を推進してきた。

このため、「権利の平等」と「義務の平等」が必ずしも一致していないのではないか、という指摘が生じている。国内メディアでも、制度変更が比較的目立たない形で進められた点や、ジェンダー原則との整合性について疑問が提示されている。

国防義務(命を懸ける義務)に差をつけるなら参政権(選挙権・被選挙権等)にも差を設けるべきではないか?

もっとも、歴史的に安全保障分野は身体的要件や動員効率などの実務合理性が強く要請される領域であり、単純な形式的平等だけでは整理しきれないという反論も一応あり得るが、後述する北欧やイスラエルのジェンダー実践は、そうした反論を一瞬する。

4.時代精神=欧州規範に苦しむドイツ

今回の制度改正は、単なるドイツの国内手続き変更にとどまらず、「平等とは何を意味するのか?」という根源的かつ普遍的な問いを、改めて浮上させたと言える。

世界を見渡すと、安全保障とジェンダーを巡るアプローチは大きく以下に分類できる。

a,北欧型(純粋なジェンダーニュートラル) ノルウェーやスウェーデンのように、法律上も運用上も性別の区別を一切排除し、個人の能力や適性のみで選抜・配属を行う完全平等モデル。

b,イスラエル型(男女皆兵・役割分担の維持) 男女双方に兵役義務を課して国民全般の国防意識を高めつつも、服務期間や免除規定、配属先において「性差」を前提とした運用を残すモデル。
記事タイトル
イスラエル、建国後初めて「最前線に女性兵士」…軍の性差別も崩れた

引用元∶中央日報
2024.01.21 12:09
youtu.be
もっとも、近年女性の最前線配備が進んでおり、実態としては北欧のような完全平等モデルに急速接近しつつある。

c,ドイツ型(志願制の維持と、男性限定の動員準備) 形式上は志願制を維持して平時の自由を担保しつつ、いざという時の動員準備網(質問票や国外滞在の事前手続き+憲法12a)を男性のみへ掛けるモデル。

こうして整理すると、現在のドイツ式アプローチは、平時において推進してきたジェンダー平等という理念と有事の動員効率という実務合理性の葛藤が作り出した(時代精神へ背馳する)アンバランスなシステムと言える。他方、ジェンダーニュートラルを実装する北欧は時代精神に適合している。

​この独自のバランスシートが持続可能なのか、それとも制度的整合性を求めて北欧的な完全平等やイスラエル的な方向へと再調整が進むのか。今後の動向は、ドイツの安全保障政策のみならず、現代社会における「権利と義務の平等」の着地点を考える上でも、極めて重要な示唆を与えるだろう。

男たちの危険領域とガラスの地下室

国連広報センター(@UNIC_Tokyo)

女性は、女性がいるべき場所を、わきまえなければなりません。女性は、リーダーシップを発揮する場、研究室、宇宙、政治、学術、科学技術、平和維持活動、ありとあらゆる場所に、いなければなりません。
※強調符は筆者による

https://x.com/UNIC_Tokyo/status/1632338217889587200 より引用



項目 ガラスの天井 (Glass Ceiling) ガラスの地下室 (Glass Cellar)
対象 主に女性 主に男性
場所 役員室、高層ビル、煌びやか、ステータスが高いゾーン 鉱業、採石業、砂利採取業、建設業、農林水産業、運輸業、ライフライン保守/工事、原発、消防、警察、軍、危険度が高いゾーン
労災負担 なし 長時間労働、命の危険、短命、高負荷労働、身体損傷、障害
社会反応 「差別だ」として打破が叫ばれる 「男なら当然」「自己責任」として無視されがち

ドイツ人男性もガラスの地下室に苦しんでるんだな。

憲法(12a)に書き込まれてるから強化ガラスだよな‥

北欧やイスラエルの女性に倣って(ジェンダー平等を支持するドイツ人女性は)フェミニズムの筋を通して声をあげればいいのに。なんか日本のフェミニズム女性と振る舞いかたがそっくりですね。

関連記事
瓦礫(危険)は誰が片付けるのか「災害労働におけるジェンダー言説の盲点」安全地帯で平等を語るIYIの欺瞞

ところでドイツ憲法の12a、男性限定の義務づけ規定が「法の下の平等(属性差別禁止)」と衝突しないのなら「12a∶男性は‥」の部分を「国民は、属性によらず各々の能力に応じて‥」と書き換えても憲法違反にならないよな。男性限定を正当化する根拠である合理的な理由(たとえば身体差)を利用して女性を排除するのはステレオタイプそのもので、歴史的な経緯を持ち出すならその歴史的経緯自体が男性を苦しめてきた最強度の差別であり、かつ憲法による固定化は差別助長に他ならない。またそうしたステレオタイプを合理的理由として認めるならば、女性に対するステレオタイプや歴史的経緯を根拠にべつの形で応能負担を義務づけても違憲扱いしてはいけないですよ。もしそれを違憲と批判するならなぜ男性に対するステレオタイプや歴史的経緯に限って残存を許すのか?という純粋論理批判に耐えられなくなる。

結局ドイツ憲法は、女性に対するステレオタイプや歴史的経緯(女性の生物学的特性や社会的役割)を否定評価しつつ男性に対するステレオタイプや歴史的経緯(男性の生物学的特性や社会的役割)については肯定評価する差別ど真ん中のセクシズム憲法。

追記∶日本の中の法的セクシズム

2026.04.07加筆

日本もそうだが、憲法に(法よ!私たちを)属性で「量る」ことなかれと書いてあるのに頑なに性別を取り出すよな。困難女性支援法などが典型で、国民を個人として扱えばよいだけなのに、なんと属性を理由に男性一般を法の救済から排除する女性限定支援の枠組みとして立法施行されてしまった。

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(出典∶eGOV)

これは条文中の文言を【女性→男性】で読み替えても成立する内容なのに、男性を男性であるという理由だけで排除してしまった差別ど真ん中のミサンドリー法である。

女性支援」でなく「国民支援」あるいは「生活支援」と中立規定すればよかったのでは?たとえば労働安全衛生法が女性安全衛生法だったらおかしいでしょう。

A∈(B∪C)⊆Dなのに、D=国民を基準にしては駄目な理由ってある?

記事タイトル
「菜箸で胸を刺され…」元妻から暴力受けた男性が語る壮絶な実態 “男性のDV被害”相談件数は20年近くで130倍超に急増…言い出しにくいワケは?【news23】

引用元∶TBS NEWS
2025年5月23日(金) 12:45

歴史的経緯や社会的背景を理由にするならば、歴史的に男性へ偏る労働災害・自殺率の高さや近年ようやく可視化されつつある男性のDV被害(130倍超!)など、既存の枠組みが救済しきれない男性の生きづらさに対しても、臆せず言及してほしい。

男性の「生きづらさ」を支援する公的枠組みは男性だから不要とでもいうのか。差別主義者でもなければ不要とは言わないはず。そうすると、新法を作るならイチからワークするより既存の枠組みを修正して統合運用するほうがスムーズだと思うけど。


https://x.com/komukaepapa/status/1900765081488486896 より引用

それと性にまつわる刑事案件で顕著だが、起訴猶予や無罪判決を受けた元被疑被告人を有罪推定(というより恒久的みなし有罪)する私刑社会から守る公的支援の枠組みも必要。

画像を見れば明らかだが、さも事実であるかのように唾液云々医師を指弾している。斯様に男性は(たとえ無罪であっても)理不尽にデマを流され加害を受け続けるのだ。


Original: karsai-nei-tsang.hatenablog.com | Author: [マBOY] | First published: 2026-04-05 | ID: pcm-puls

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