副題:語り部は陰陽の陽しか語らない
話題のTikTok動画へ言及する森田氏の引用コメントが目を引いた。動画テーマはさしずめ【高齢者の暴力に悩む介護職員】だろうか。
この動画、及びこのツイートへの反応には非常に重要な問題がいくつも含まれています。
◯警察呼ぶ、後ろから羽交い締めなど、行動を抑制するような介護をしてはいけない(どんな行動にも理由があるのでそこに寄り添うべき。そもそも外出禁止とか行動制限が非倫理的)
◯そんな介護現場で介護の基本が全く教えられていない
◯外国人労働者に現場を押し付け、最低の人員で現場を回し、利益を貪る介護公金ビジネスの実態
◯そしてこのツイートへの反応が「こんな老人は拘束しろ」「力で押さえつけろ」で埋まっている現実。
世間にはケアの本質などまるで伝わっていないし、理解もされていないという絶望感…
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動画内容をみた感想を述べると、業務を撮影してTikTokで情報流した介護職員の企図がまず遺憾だ。
介護職員にとって施設利用者はクライアントだから何が何でも護る責任がある。実際どうであってもTikTokで情報流すのは御法度。
介護保険法や介護福祉士法のいう【相手の立場に立つ】は暴力への対処や非難を禁止する意図もなければ趣旨でもない。仮にそうした趣旨だと【憲法違反(18条後段:苦痛を伴う任務の強制)】では。
対処が民法や刑法の許す範囲を超えるとき、当該【部分につき】叱られる、ならばわかる。
高邁な理想を通すには諸条件を満たす必要がある。たとえば次の理想「警察呼ぶ、後ろから羽交い締めなど、行動を抑制するような介護をしてはいけない(どんな行動にも理由があるのでそこに寄り添うべき。そもそも外出禁止とか行動制限が非倫理的)」はあまりに介護現場の実情を無視してる。
動画内に羽交い締めを確認できる箇所は見当たらないが、森田氏の主張は【状況次第】ですべて肯定される内容で非倫理的でもない。
その点動画は前後の状況を写してないから職員がした行動抑制(警察スピーチロック、背後からの物理ロック等)の職業的是非を軽率に判断するのは控えたい。
細かな事情もわからないし。
ショートなのか特養なのかサ高住なのか有料なのか老健なのか施設形態がわからない。人員配置や当該時間のオペレーションがわからない。婆さんのアセスやサマリーや介護記録がわからないから普段の生活実態が見えてこない。
そのうえで一般論として述べると同様の場面、たとえば男性高齢者と女性介護職員の関係であっても「どんな行動にも理由があるのでそこに寄り添うべき」とか「行動を抑制するような介護をしてはいけない」となるのだろうか。
有形力の態様が【突き飛ばす】ならどうか。外出制限についても離設・離園防止の観点から一定制約せざるをえず、また身体抑制についても【そうする事ぬきには】ご本人や他利用者の安全と人権を守れない急迫した事情があるならば、一時的かつ必要限度において認められないと不条理。
個人の自由意思や尊厳も大切だが施設は集団生活の場だから他利用者の平穏を侵さない範囲にそれらが限局されるのは仕方ない。
“仕方ない”という考えかたに過剰反応する人を一定数みますけど、隣人の日常生活を破綻させてまで【無前提・無条件】に行動の自由すべてを認めてくれる社会なんてこの世界に存在します?
なぜ介護施設の話になった途端「どんな行動にも理由があるのでそこに寄り添うべき」となってしまうのか。それでなくとも介護職員は一対多数の人員配置で現場の安全と施設利用者の人権を守ってるわけです。夜間帯だと職員一人で20名以上を守らなければならない施設のほうが多い。
森田氏系の介護観を支持する人は「どんな行動にも理由があるのでそこに寄り添うべき」とか「行動を抑制するような介護をしてはいけない」論に拘るかもだが法は理由次第で抑制を許すと思うな。
だって身体拘束要件は緊急避難の概念を取り込んでますよね。
なお正当防衛については認知【症状(たとえば易怒性)】を不正行為で定義可能か法曹じゃない私は判断困難だから緊急避難という。
正当防衛という語は福祉分野に馴染まない荒々しさを感じるし。
※施設も一つの社会。私個人としては刑法第35条が参照可能な(急を要する際の強制保護や強制制止等)根拠文言を介護福祉士法の中に正当職務行為として直接追加、介護福祉士必置義務規程を介護保険法へ追加すべきだと思ってる。
文言については【精神保健及び精神障害者福祉に関する法律】第36条第1項あたりが参考になる。
夜は眠る時間⇒都市伝説
記事タイトル施設利用者の自由放任へ介護側が寄り添う従来スタイルだと現場の安全を維持できなくなりますよ。いや崩壊してる現場のほうが多いのでは。(介護事故の背景因。)
「夜勤が怖くて仕方ない」ワンオペ解消を求める要望書提出 4万筆の署名とともに「複数配置を当たり前に」
引用元:介護ニュースJOINT
2022年11月11日
厚生労働省は介護職員の声を軽視いや無視したうえで介護の諸問題を介護職員の質に帰責するけれど、国民の命がかかってる自覚をもってほしい。そして行政の不作為を現場の介護職員の責任にスリ替えないでほしい。
そもそも高齢者御本人の真意は多くの場合、施設になんて入りたくないんです。
認知症進行にせよ易怒発現にせよ不安の根底に灰心喪気の悲しげな憤懣がある。
高齢者へ本当に寄り添う形とは、御自身が父母にそうされたように、家庭の中で御家族が愛情をもって機微と伴走することでしょう。
多くの場合、御家族の顔をみると高齢者に笑顔が戻る。介護職員はお手伝いできても本当の意味で寄り添えるのは家族だけです。
閑話休題
理想を語る森田氏系の反応を恐れて現場一般は【過剰に自己規制】してる。動画でも女性介護職員は四指を握られハタかれながらも必死に“笑顔をつくり”接してる。
そうしなければ、【表情や言葉】一つから適切なコミュニケーションをとれてない介護職が悪いのだと事情を無視して虐待扱いする正義の偽善者があらわれるから。
凡そ行政や事業者は偽善思考。
動画でも婆さん、女性介護職員のことを怖いと罵りつつ冷静にハタいてるように見える。何より衝撃なのが「叩くの楽しい‥」と動画7秒あたりで音声拾えること。
‥まあそれでも業務を撮影してTikTokで情報流す手法は護職の矜持として遺憾という他ない。
ただ施設も行政も高齢者第一主義のもと適切なコミュニケーション一点張りで利用者の狼藉に無関心なのでTikTokで現場の悲惨な実情を公開する以外なかったほど追い詰められてたのかもしれない。
まあ厚生労働省含め綺麗事論者は適切なコミュニケーションの具体的内容を誰も把握してないですからね。介護職員の質へ帰責したいがため適切なコミュニケーションなる概念を捏造して現実逃避してるだけ。これで凡その問題を介護側に帰責できる。自分達のコミュニケーションの問題じゃない?と。レベルが低いからだと。
悔しいですよね。
気持ちは痛いほどわかる。
しかしそれでもTikTokは御法度。
あくまで内部闘争による解決を目指すべきであり、そうしないのなら潔く施設から去るのが護職にあるべき職業倫理でしょう。
利用者の退居要件を厳しく定め運用徹底して職員をきちんと守る施設も探せばありますから。
介護職の“労働環境や人権”を軽視しない、労基法や労働安全衛生法への遵法心を持ち合わせた真面な施設が見つかるとよいですね。
というか、労働者の人権をかえりみない介護事業所についてブラック施設と表現するのは良くない。
法秩序に挑戦する事業所が仮にあるならば、その事業者は反社会勢力なので悪業へ加担しないためにも介護業界の健全な未来のためにも介護士は積極的に離職すべき。
そうしないならば職員への暴力は即時退居しかない。若しくは入居要件を厳しくするとか。
ケアの本質だか介護の基本だか知らないが、利用者の暴力へは厳正に向き合わんと現実世界の介護職員心身もたないと思うぞ。
それと綺麗事と引き換えに他の利用者へかかる不利益負担や人権侵害を等閑視しちゃだめでしょ。
※身体抑制、拘束ゼロを掲げる介護施設は要注意です。
こうした施設は他利用者や介護職員への人権侵害を軽視または無視する可能性が高く離職率に影響しますから常に人手不足でサービスの質は悪い傾向にあります。
例:徘徊男性が夜間に女性部屋へ侵入するケース、女性によっては恐怖から感情失禁と軽度のパニックで不眠に陥ることがあります。
この場合、部屋を施錠したら隔離(逮捕・監禁罪)ですか。同意があればよいですか。同意とは真意の確認を要することなく相手が頷く外形を視認すれば足りますか。
それ以前、【被害者である女性】の行動制限ならば許されて【加害側である男性】の行動制限が許されないのはなぜですか。
「どんな行動にも理由があるのでそこに寄り添うべき」だから?「行動を抑制するような介護をしてはいけない」から?
また施錠で対応する場合、男性側は無理に侵入しようと活動がより活発になる可能性もあります。扉を強引に蹴破ろうとした認知症男性の実例もあります。こうなると、女性側は悲劇でしかない。
いや女性だけでなくすべての施設利用者が恐怖を堪えて朝を待つ不幸に。最悪施設全体が不穏化して離床ラッシュが始まりかねず、これは転倒事故蓋然性を同時多発で招く安全管理上の危機である。
暴力・破壊・粗暴・奇声を伴う徘徊は最悪、誰かの命にかかわる。
挙げ句、事故が起これば当該介護職員は自己の名で事故報告書を作成せねばなりません。裁判に発展するケースもあります。こんな異常な負担を介護職員であったり他の施設利用者に負わせる偽善標語が身体抑制、拘束ゼロですね。
一般論、客の暴力に我慢を強いる非倫理的な職業あったら社会から消滅したほうがよいと思うけど、介護業界だけ別枠なのはなぜだ。
これ現場を蝕む深刻な問題なんだが客の振るう暴力とストレスになんで忍ばなきゃならないんだよ。
凡そ社会の場で暴力が許されるケースなんて存在しないのに、なんで介護職員へ向かう暴力だけ寛容さを求められるのか。当の者が自己信念でそうするならば立派だけれど、直接介護に従事しないものが暴力に苦しむ当事者へ【してはいけない】と呪縛するって一体‥
人格的尊厳は皆平等だ。高齢者が年齢やクライアントであることを理由に特別尊重されるわけじゃない。他人の身体を正当な理由なく傷つけるなど許されない。お年寄りならば認知症ならばクライアントならば許されるとかない。
武見敬三厚生労働大臣閣下へ
介護保険法や介護福祉士法のいう【常に相手の立場に立つ】は暴力への対処や非難を禁止する意図もなければ趣旨でもない。仮にそうした趣旨ならば【憲法違反(18条後段:苦痛を伴う任務の強制)】では。対処が民法や刑法の許す範囲を超えるとき、当該【部分につき】叱られる、ならばわかる。
私は冒頭こう書きました。これ間違ってますかね。
介護職員はたとえ暴力を受けても一方的に堪えて高齢者へ寄り添うべきなんですか?
介護職だって【憲法差出人】であるはずなのに【実体法秩序】から除外されるのはなぜですか?
身体抑制や行動制限は原則許されない。ただ思うに、この原則があまりに拡張解釈されすぎてる。
もうそろそろ、暴力に悩み苦しむ全国200万介護職に向けてガイドを出すべきじゃないですかね。
厚労省のマニュアルもどき
ちなみにガイドって下掲の三菱総合研究所ヘルスケア&ウェルネス本部発行マニュアルじゃだめですよ。要約すると事業者へ対策(相談窓口設置や環境整備)を求めつつ介護職員には事前の的確な介護対応と事後においての経緯把握/分析等を求めるもの。
つまり無内容。
一般論、対策は実効性ある有効なものでないと無意味だが、有効な対策を虐待化する不条理な価値観秩序(高齢者第一主義/人権無限定主義)に縛られ現場は何もできずにいる。結局のところ無秩序が放任され介護職員も他利用者も人権侵害を耐える以外にやりようないケースが多くなってしまう。
最新版:2023年10月現在
出典:厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html
発行:三菱総合研究所ヘルスケア&ウェルネス本部
介護職は、叩かれても無抵抗じゃなきゃダメですか?
こうしたガチの宗教愛を気持ち悪いカルトとして散々否定してきたの日本社会側なんだよね。
あと森田医師、御自身の専門である医療と【まったく異なる】分野である介護へ【本質】の語を用いて容喙するの、それ他分野軽視にうつるから止めてほしい。医師に向かって医療の本質を説く介護士いたら「まじかよこいつ‥」とか思わないですか。
前者は無問題だが
後者は僭越ですか
当該動画と森田医師のコメントは、介護業界の抱える重要な課題を浮き彫りにしました。
諸問題を介護職員の質に帰責することで厚生労働省や学者などテクノクラート(制度設計側)は己の責務から逃げてます。現実が理論通りでないのは現実(介護職側)に問題があるからだ。これが日本の制度論と制度を論評するいわゆる知識人のスタンス。多分こんな発想するの世界中で日本の文系諸氏だけなんじゃと憶測する。
理論と現実が食い違ったら、普通は理論を修正するもんなぁ。