24-BLOG

雑文集

結局どうする介護の未来

副題:アイロニーの悲壮

ある福祉ワーカーがいった。
「福祉職は聖職である。」

こういった発言も非難対象になってしまう世相のようだ。まあ動機や目的など就業に至る事情はみな違うし状況次第で人生観も変化してゆく。

福祉は聖職だなんて言ってるからボランティア精神が強調され(いわゆる)やりがい搾取されるんだ‥という苛立ちも、単なるワークであってそれ以上でも以下でもないのに崇高な使命や責任を背負わせるなよ‥といった余計なお世話感もわかる。

以下は孫引きだが、ひろゆき氏にいわせると、曰く「長期的に見て介護職は減った方が良い」「人は、人に介護されるより、機械に介護される方が精神的に良いから」「介護職に就いた人は間違いなく腰を悪くし、腰を悪くしたら最後、もう元の日常生活を送るのが難しくなるから」らしい‥

『介護職はいらない!』は?なに言っちゃってんの??寝言は寝て言え、ひろゆきさんよ。

引用元:大阪介護転職ネット
次に紹介する対談は資本主義自由経済下における「当たり前」を言葉にしただけなので、介護業界も当該前提によって成り立っている、そう考える立場であれば非難される謂れのない理屈。ただホリエモンとひろゆき氏は毎度勉強不足のため今回も例に漏れず介護保険制度をご存知ない。介護の報酬単価は法で規整されてるんです。需要>供給でも市場原理を使えない業界。
ホリエモン×ひろゆきがツイッターで炎上した「介護職の給料は上がらない」問題を考える

引用元:週プレNews
(2016年9月17日 06:00配信)
一つ目の記事で大阪介護転職ネットの人怒ってるけど、これが社会つまり日本人多数の認識ならば、機械への代替でワーカー救われるんじゃないか。身体への負担は軽減されるしある種の論理的無理に起因するストレスからも“互いに”開放される。
次期介護保険法改正審議スタート:医療・介護のニーズ急拡大

人手不足中で、介護職員を大幅に増やしていくのは非現実的。

(中略)

多くの委員から、介護ロボットやICT、介護助手活用をさらに推進した生産性向上を図るべきとの意見が挙がった。

引用元:介護求人ナビ
2022年04月13日配信
介護職は機械オペレーター兼行政・社会と利用者を繋ぐオーガナイザーとして再定義されたほうが社会的地位も賃金も上がると思うな。

なにより【「低賃金/低評価/高負荷」の努力が報われない貶価産業を、理念という名の“やりがい”搾取で維持しようとする日本社会の歪んだ精神構造は崩したほうがよい。】という考えかたを一概に間違いとも言い難い。

※ここでいう低賃金・高負荷は業界の傾向です。潤沢なリソース(人員/設備/資金)を備える事業所もそりゃあるでしょう。
理不尽な介護環境に加え施設利用者等から被るハラスメントや暴力に耐えてする糞尿まみれの【低賃金/低評価/高負荷】貶価WORKなんて誰も就きたくない。
参考資料①
日本介護クラフトユニオン「ご利用者・ご家族からのハラスメントに関するアンケート」結果報告

https://www.nccu.gr.jp/torikumi/detail.php?SELECT_ID=201806250004

参考資料②
【ふじみ野市散弾銃男立てこもり事件】母親を入院させるよう勧める医師Bの意見に反対し在宅で介護を続けたいと話しており、埼玉県警は母親が死亡したことで容疑者が診療に当たっていた関係者を逆恨みした可能性があるとして...

引用元:Wikipedia
https://w.wiki/68z8

参考資料③
老人ホームで職員殺害、提訴遺族
「施設の安全不十分」大阪

引用元:朝日新聞DIGITAL
https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S15545239.html
病院は介護と施設趣旨・目的を異にするものの共通点が多いので、次の事例を参考に介護現場が構造的に抱える諸問題(虐待定義と個別事例への当てはめ問題、全人的価値実現を個単位で目指す実現不能な高齢者ファースト問題、介護側が高齢者また御家族から受けるハラスメントや暴力の問題、要介護状態の適正評価問題、配置基準等のリソース限界問題等)あれこれについて、機会が巡れば書きたい。
県立西宮病院で認知症患者が転倒、重い障害「転倒の恐れ予見できた」県に532万円支払い命令:神戸地裁

引用元:神戸新聞NEX
2022/11/2 11:57

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202211/sp/0015773009.shtml
マニュアルは守られたか?
(オペレーションチェック)
予見可能性はあったか?

問題の所在をこれらへ固着させるのはフェアじゃない。

たとえば20:1の状況下、認知症(中核症状/BPSD共に顕著)かつADL難あり利用者の休まれる居室6箇所から同時発報を確認するようなケース、これはそれぞれ秒で場面確保しなければ転倒事故の蓋然性を惹起する急迫した状況だがやむを得ない対応順番付けであっても他方からは介護放任(ネグレクト)と認識されやすく御家族からの虐待評価を受けやすい。事故に至れば尚更だ。 

身体拘束はほぼ虐待扱い。なけなしのスピーチロックによる行動制止さえ虐待と謗られる。

そもそも意思尊重(行動選択/決定)を妨げるアクション自体を憚る。利用者主観で相手に不快を与える行為全般が駄目でして。

斯様に現実は凄惨だ‥

スピーチロックを説明すると、10メートル先で自立歩行困難な認知症利用者が椅子から立ち上がろうとしている危険度の高い急迫した場面であっても大声で制止をかけたら虐待扱い。

なぜなら、スピーチロックは認知症利用者の意思尊重(行動選択/決定)を妨げる行為だから。

リソース無視の過大要求‥
「夜勤が怖くて仕方ない」ワンオペ解消を求める要望書提出 4万筆の署名とともに「複数配置を当たり前に」

引用元:介護ニュースJoint
2022年11月11日

https://www.joint-kaigo.com/articles/3534/
おそらく一人夜勤者は行政解釈上の休憩時間を取得できてない。一夜勤内(施設によるが概ね16〜17時間勤務)の各時間に分散する待機時間を合算して休憩と慣行解釈してる気がする。労基法を管掌する厚生労働省が夜勤一名体制を把握しながら黙認する以上どうにもならない。
休憩時間とは、「単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」昭22.9.13 発基第17号
現役世代は介護保険料増額NOだし当事者世代は高額な利用料金を払う気ないし、抜本改革として子が親の面倒をみる、親は子にみてもらう(個人単位社会から)家単位社会への切り替えも皆さん嫌なんだし、移民も反対だしと。それでいて高齢者ファーストなんだと。あれも嫌これも嫌だが理念/理想だけは高らかに掲げるのは日本社会の良き伝統。

自分は絶対に手を汚さぬ者達の机上から嘯く理念/理想の犠牲にされる業界。学生向け就職情報サイトまで介護士を底辺職と紹介する世情が若者心理の深層を虚飾なく映してる。働き手にだって守られるべき生活や尊厳はあるからね。これじゃ働き手が集まらないのも道理では。


出典:厚生労働省
介護職員の必要数について
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf



出典:内閣府
平成29年版高齢社会白書
高齢者の健康・福祉
認知症高齢者数の推計


もう高齢者が機械(狭義のロボット)に世話される悲しい未来しか想像できないけれど、いまさら誰も文句なんて言わないはず。というか、まともな神経してたら言えないよ。

当の高齢者含め誰もやりたくない、現にやってこなかった馬鹿にしてきた貶価業じゃないか。


損得の先に‥

最後に語としての「福祉」二文字を分解し漢字辞典から字義及び解字を明らかにしておこう。



出典:新漢語林第二版

なんだか聖職というより神職じゃないかと感じた。職業に貴賤など存在しないが私は介護福祉職こそが本当の意味で神職だと思っているよ。

神に祈る暇があるなら目の前の人間と直接向き合えよと思うから。神は誰も助けない。人間を助けられるのは人間だけだ。

いまや医行為(口腔内の喀痰吸引/鼻腔内の喀痰吸引/気管カニューレ内部の喀痰吸引/胃ろう又は腸ろうによる経管栄養/経鼻経管栄養等※1)領域へまで踏みこみ医療麻薬(タペンタドール、オキシコンチン等)を取り扱う場面さえある介護職。

純医療従事者たる看護職との間に共通基礎課程を設け互換可能な職種へ改めんと企図する厚生労働省、、まあ介護福祉士を准看レベルと統合する未来はあるかも。あまりに非効率なので。

看護師職務①療養上の世話
②診療の補助
介護士職務①心身の状況に応じた介護
②診療の補助(一部)

※1)
社会福祉士及び介護福祉士法
第二条の二
この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。

社会福祉士及び介護福祉士法
第四十八条の二
介護福祉士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とすることができる。

保健師助産師看護師法
第五条
この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。


介護は社会に必要かつ誰にでも出来る仕事と言われながら、実際に出来る人、やる人は少ない。介護はそれと向き合う者の心を映し出す。意思の意は心の音と書く。

‥なるほど妙に納得してしまう。どうか彼ら介護福祉職が報われますように。

© 24-BLOG Repost is prohibited
I'm in a contract with Mikata 弁護士保険