24-BLOG

雑文書き

出版中止騒動と保護主義運動

副題:保護主義左派思想自由主義右派思想

『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇(原題:Irreversible Damage)』の出版が「トランスジェンダー差別助長につながる書籍刊行に関しての意見書」を受けて中止になったようで、案の定というべきか炎上し、まるで感情を精算する術を探すかの如く反発する層からは言及が止まない。

内容確認できないし差別助長に繋がるのか知る由もないが、邦題に偏見をみてとることはできる。

名辞と内容を一致させる

ところで私は儒教嫌いだが論語嫌いじゃないから次の考えかたに概ね同意してる。なので語釈に新明解国語辞典と新漢語林を愛用しておりいつも世話になる。感謝。

以下ウィキペディア正名より引用
【原文】
子路曰:「衞君待子而爲政,子將奚先?」子曰:「必也正名乎!」子路曰:「有是哉?子之迂也!奚其正?」子曰:「野哉,由也!君子於其所不知,蓋闕如也。名不正,則言不順;言不順,則事不成;事不成,則禮樂不興;禮樂不興,則刑罰不中;刑罰不中,則民無所措手足。故君子名之必可言也,言之必可行也。君子於其言,無所苟而已矣。」

【現代語訳(要約)】
子路は孔子に向かって次のように質問した。「もしも孔子が衛国の君主に政治顧問として登用されたら、まず何をするか」と。その質問に対して孔子は「名を正す」(正名)と答えた。「それはどういうことか」と子路が尋ねると、孔子は次のように答えた。「もしも名が正しくなければ、言論の筋が通らなくなり、政事が達成されなくなり、礼楽が振興しなくなり、刑罰が妥当でなくなり、民は不安に駆られて困窮してしまう」と。

wiki最終更新日
2023年11月26日(日)

気になるワードは伝染と悲劇。

私の好きな新明解国語辞典からそれぞれ引用しておこう。

伝染病原体がある個体から他の個体にうつって(同じ)症状が現われること。
悲劇㊀悲惨な結末に終わるなど、人生の暗い面を題材にした舞台芸術。

㊁不幸・悲惨な出来事。
悲惨まともに見ていられないほど、痛ましい様子だ。
いずれも認識の基底にトランスジェンダーへの露骨な否定感情がなければ選択肢にあがらない言葉だと思います。内容を確認できないとはいえ邦題からでも訳者が原著をどう訳し描いたのかその輪郭を一定窺い知ることはできる。

これらの言葉は差別の前段階である偏見を育てこそすれ(冒頭書いたように)果たして差別を助長するか?私にはわからない。

なので出版中止を示威的に求めたとしたらやり過ぎ感はある。

つまり非難や抗議それ自体でなく態様の適否や社会的相当性を論点にするのならばわかる。

で、実際どうだったのか。

訴えの態様


https://twitter.com/koba_editor/status/1731563521719337035より引用

極めて穏当であり出版中止を求めてもいない。人の尊厳にかかわる価値判断へ鋭く踏み込む以上、有志らの憂慮や(出版中止でなく何らかの対策を促すにとどめた)言行はよくわかるもので、対応の結果中止を決定した者の判断と分けて考えたほうがよいと思う。

正名を付け足すと、よく言われがちなワードに【言論弾圧】がある。これは明らかに嘘である。

おなじみ新明解国語辞典から。

弾圧権力・武力によって、反対勢力などを抑えつけること。
つぎは新漢語林から。
弾圧(権力で)強くおさえつけること。【弾】の第一義ははじき弓。
有志らの申し入れや出版社対応から誰の何が弾圧されたの?

普通に購入可能ですが‥

焚書批判(検証機会を奪う論)もいいすぎです。だってシュライアーのこれですよね。本記事作成時点では普通に購入可能ですよ。これは紀伊國屋書店ですが、アマゾンでも普通に購入できるのでは。
※アフィリエイトじゃないです!
www.kinokuniya.co.jp

リアル言論出版妨害事件

昭和の言論出版妨害事件wikiを嫌味と風刺で比喩的に焚書呼ばわりするならわかる。事件当事の公明党は第7回参院選で11人当選、第32回衆院選で47議席第3党に躍進しており権力中の権力たる田中角栄まで出版中止要求に絡んでる。

このレベルで介入されたの?自由を大切にする人達って自由の価値を標榜するクセに反対表現にやたら狭量でケツの穴が小さい。



自由社会を維持する主体

私は私的自治を損なう国家介入による規制作用を嫌うけれど、私対私の関係で特別に保護されるべき言論があるとは思わない。価値判断取捨選択の自由は当然出版社にも及ぶと思うから。表現媒体違いますが、今こうして書いてるブログ記事の内容だってプラットフォーム側の取捨選択に依存する。

たとえば⚫⚫表現や▲▲表現の適否は表現の取捨であって【否】ならば公開を止められます。

レストランならばドレスコードによる入店拒否も(民法第521条)契約の自由でしょう。

YouTube配信や広告だってそうですよね。運営が問題を認知すれば止まります。認知の端緒が内部発か外部発かは問題じゃない。

思うに、表現の自由な社会を維持する役目は一出版社のみが担ってるわけじゃないと思うよ。

これは意識的であれ無意識的であれ社会全体で担ってるのですが、表現の保護を訴える運動家たちは視野狭くないですか。

私がエロ表現したくなったときは潔く【エロ🆗サーバー】を借りて順当にワードプレス等へ引っ越しますよ。大多数はそうでしょ?

レストランにしてもドレスコードのない店に行けばすむのだし。

そうせずに、ブログ引っ越すの嫌だから/そのレストランじゃなきゃ嫌だから【(そうした)規範を設けてはならぬ】と運営者へ不作為義務を求めたら無茶要求だろう。

要は表現場それ自体の有無や表現に触れる機会の有無じゃなく、自分基準で納得できる環境保障の話をしており応諾義務のない相手に(そんな権利ないのに)権利を奪うな保障しろと言ってるのだ。

ある出版社やプラットフォームがすべての表現物につき無前提無原則に出版公開する義務又は使命を(表現者を包含する)社会との関係で負うの?あらゆる表現物は平等に保護されるべきとかそんな都合のよい保障、日本も一応自由社会だから当然には及ばない。

また今回のようなケースで起こりがちな対抗言論必須説?(言論はすべて保護されたうえで言論には言論で対抗せよ)も間違い。

これは保護主義者側の針小棒大な思い込みで自由社会にそんな義務は要請されない。

(出版社やプラットフォームなどの)法人を公権力に見立て憲法で御さんと云々始めるのは左派にみられる特徴だから、自由社会を大切に考える人は今回の件をわりとフラットに受け止めてそう。

今日も金奼真少年キンタ・マボーイいや私はいつこの表現場を追い出されるかとヒヤヒヤしながら書いており、私に虫瞰すればこれは表現リスクだが、鳥瞰するなら私の感じるこの対立と制約こそにプラットフォーム側の自由が担保されてるとも言える。そしてこうした許容せざるを得ない制約作用をストレッサー公共の福祉(内在制約)と表現するんじゃ‥

100㌫無制約の完全自由空間なんて社会に存在するわけない。


関連記事:憲法改正と公共の福祉
https://www.s24pro.jp/entry/2023/08/20/153959

結び:不易流行

ホームを辿ると、KADOKAWAの理念は【不易流行】とわかる。

受け入れるべき価値の変化と変えてはならぬ節度がある。理念にかなったよき判断だと思うけど。

追記:他出版社から刊行

記事タイトル
発売中止から復活「トランスジェンダー本」監訳者岩波明氏も驚く米国の「ジェンダー肯定ケア」

引用元:文藝春秋
2024/04/26
紆余曲折あったようですが、産経新聞出版から見事刊行されたようですね。

私は上本文で『思うに、表現の自由な社会を維持する役目は一出版社のみが担ってるわけじゃないと思うよ。これは意識的であれ無意識的であれ社会全体で担ってるのですが、表現の保護を訴える運動家たちは視野狭くないですか。』と書きました。無論、行き過ぎた抗議に対してまで寛容である必要はありませんけど。

捨てる神あれば
拾う神あり
捨てる神も
拾う神も
八百万なり

訳も伝染から流行に修正されてるあたり、さすが産経‥

価値判別・価値選好といった取捨選択の自由を、異る道を、それぞれが独立独歩で進む。これ以上ごちゃごちゃ言うのは蛇足だよ。

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