24-BLOG

雑文集

自由の盲雨

いわゆるキャンセル・カルチャーと不祥事キャンセル(契約解除)は性質のまったく異なる事象だが、割と混用の多い概念。

前者は当事者甲乙と正当な権利関係のない丙及び多衆が登場人物。そしてキャンセル然らしめるため多衆の威迫(他人に対して言葉や動作で気勢を示し不安を感じさせること。)を用いる点に特徴があると思う。

前者は社会運動
後者は企業ガバナンス

他方、後者は乙と正当な権利関係のある甲による自発的・主体的乙評価と権利行使の結果でしかないと思う。判断の端初が第三者提供であったとしてなお。

本来は(表に)存在しないプライベート会話で出た過言であったり、特定の誰かを対象とした言葉と違い、開かれた表現空間で「○○は▲▲でない又は▲▲である。」を属性に対して投げてしまったら、そりゃ文脈も何もない。

この場合の文脈とは「あるa.b間」における解釈の特殊性。

たとえば私が友人とのプライベート・コミュニケーションの中で「○○はバカだなぁ」と一個人としていう時のバカと、源氏名やペンネーム、屋号等事業者名を顕名して行う経済活動などオフィシャル・コミュニケーションの中で属性に対して同様の言葉を発するのとで効果や作用の違いが言葉に現れないわけないだろう。

また当然言葉の種類によってその軽重も変わる。それでいうと「○○属性に人権はない。」などの発言は重すぎた。

一方だからといって絶対言挙げしてはならない言葉や発言なんてのもアリはしないし作りようもない。それが自分に跳ね返る禍言(不利益や禍を招くような悪因縁を結ぶ言葉、舌禍)で在ったとしても成るとしても、喋る人は結局喋るし他人が塞ぐことなど出来やしない。

さて、では件の問題を例にすると、当該企業は当該発言について、「日本国において絶対言挙げしてはならない。」といっているのか。又は当該個人を規制して発言を妨げているのか。

言ってないし妨げてもいないと思う。そして言うわけもないし妨げるわけもない。また一般論として一民間企業にそんな意味不明な野心はないし規制力もない。官公庁じゃあるまいし。

(秘密保持契約等のもつ規制力はまた別の話ですよ。)

つくりたい企業イメージや事業目的に照らさばウチとはミスマッチ、と判断されても(プロゲーマー氏は大変に気の毒であるが)いたしかたないのでは。

これを抑圧と受け止める繊細な人もいるだろうけど、そりゃそう受け止める繊細な人はいるだろう。絶無じゃないという意味で。

いわゆる表現の自由言論のおかしな点は、恒常的規制として表現空間全体に指定色をつける行為と特定の場面や特定の場に限定して特定の表現を除外する行為とを区別しないあたりに一つ見い出せる。

たとえば、「我々は、人種を繋ぐ結縁のキャンパスたらん。」を理念に掲げる企業(甲)とタイアップする事業者乙がオフィシャルな場で事業者名を顕名して人種差別発言をしてしまった場合であっても、これを理由として甲がタイアップを解消してしまうと乙に対する「表現の自由抑圧・表現規制・キャンセルカルチャーに与する不当判断」などと見当違いの論評?がなされるんだろう、きっと。

原則論、委任契約は当事者間の信頼関係を基礎とする契約だから、受任者(又は委任者)が著しく不誠実な行動をとった場合に当該契約関係から双方離脱する権利を認める民法第651条の考えかたは違和感なく納得できるものだし、損害発生の有無は別問題(第2項)だよな。
プライベートの個人発言であったなら表現の自由文脈で擁護するのもわかる。措置の相当性の話と当該問題を表現の自由文脈で論じることの妥当性とを区別した上で処分重いよね、寛大な措置を、ならこれもわかる。

しかし、何でもかんでも「表現の自由(原理原則)」一辺倒で擁護可能と発想するあたり、いついかなる時も「我を貫かせて貰える権利」を他人に主張するあたり、正当な権利関係にない第三者の立場でありながら第三者の立場で勝手に創作した条件設定や主観基準をデュープロセスと嘯き当事者判断を評価する根拠に採用しちゃうあたり、無罪推定概念を持ち出しちゃうあたり、判断に至る事情の秘匿性を認めないあたり、もはや(いわゆる)表現の自由戦士の振る舞いは、論評を超えた単なるわがままでは。

放縦と自由は違う。

なぜなら自由は相互に存し、その限り具体化された自由は具体的相応の自由へと「resize」されざるをえない性質をもつから。

法律行為自由の原則だって表現の自由の一様態でしょ。

ところで関連する問題として、過去記事「どっちもどっち?」で書いた感心できない抽象化の例を、以下の発言から見い出せる。わかりやすい。

あと半分冗談ですが、物理視点でいうと粒子(相互作用)と波動(波の独立性)の違い。

我々は波じゃないんだよね。
人間の活動は粒子の運動でしょ(笑
自由は相互に存し、その限り具体化された自由は具体的相応の自由へと「resize」されざるをえない性質をもつ。

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